父の写っているビデオを見つけてくれた人がいて、久しぶりに動いている父を見た。不可思議な世の中である。今年は、世界中で1億人くらい、日本で100万人くらいの人が死んだ。動画のなかで動いている人が大勢いるのだろう。
大晦日死者みな生きている動画 くろやぎ
娘二人来て帰りけり大晦日 永井龍男
2011年12月24日土曜日
青
文明の衰退はとどまるところを知らず聖夜かな
(van der Werff の「キリストの埋葬」。青が印象的である。17世紀までのヨーロッパの絵師たちにとって、青い絵の具といえば高価なウルトラマリンとか緑がかったインディゴとかくらいしか無かったのだが、18世紀はじめにベルリンの絵の具屋が何かの配合の間違いで未知の青い絵の具を作ってしまった。ベルリン青とかプルシアン青とか言われる顔料である。これを契機にして人工絵の具の時代が始まったそうである。絵の具界の文明開化である。「キリストの埋葬」はプルシアン青を使った最初の頃の作品。この新しい絵の具をどう使おうかとわくわくしながら考えたんでせうね。)
暗天に青絵の具塗り込めよ聖夜なれば
2011年12月22日木曜日
冬
(googleで「寒晴」を検索したら2頁目の一番上にこのブログが出てきた。googleの検索結果は、他所からどれくらいリンクされているかとかそういう、いわばネット世間での被引用度みたいなものを基準にして表示順位を決めていると聞いたことがある。そうであれば、いくらなんでも、開設したばかりで本人以外は誰もしらないようなページがそんなに上に来るのはおかしいのではないかと思う。ここで文句を言っても仕方ないのであるが。)
冬の鵙決して大人を信じるな
電飾を巻かれて寒し冬木立
冬の空高圧鉄塔刺さりをり
冬帽子寒き宇宙のどまんなか
(1,2年前に俳句のようなものを書き始めた頃、とにかく季語をいれて、とにかく定型に言葉を詰めこんで、それでなにか面白いものができないかと思っていた。しかし定型の使いこなし方を知っているわけではないし、そもそも季語をいろいろ知っているわけでもないので、とりあえず「冬」である。あと「冬なんとか」にすればいいだろうとか。われながら、どうかと思う。)
歩くのみの冬蠅ナイフあれば甜め 西東三鬼
冬の鵙決して大人を信じるな
電飾を巻かれて寒し冬木立
冬の空高圧鉄塔刺さりをり
冬帽子寒き宇宙のどまんなか
冬木に手あてれば冬の木になれる
落ちて直ぐ湿る白布や冬の庭 永田耕衣
歩くのみの冬蠅ナイフあれば甜め 西東三鬼
2011年12月3日土曜日
2011年11月29日火曜日
2011年11月28日月曜日
氷
繰り返し氷の張るはおそろしき 永田耕衣
(僕が子どもの頃は地球はいまより寒くて、冬になると雪が沢山降ったし、道路脇の用水路にも氷ができていた。近所の神社に池があって、春になると蛙がうじゃうじゃ孵るのだが、その池に氷が張って、毎朝学校に行く途中石を投げたり、縁に半身を残して片足のつま先で突っついたりして、割った覚えがある。割れた氷を掬いあげて、氷越しの景色を面白がったりするが、ふざけあったりしているうちに粉々に割ってしまう。学校の帰りに見ると池の氷はたいてい融けてしまっているのだが、格別寒い日は、割れたままの氷が残っていたりする。翌朝にはその割れ残りを含んだままに新しい氷が張っている。氷は来る日も来る日も張っていた。)
薄氷の透けて世界の懐かしき くろやぎ
(氷には何かしら得体のしれないところがあると思う。こういうことを書くと、そのはしからすぐに、いや氷だけではなくて石にも木にも得体のしれないところはある、と思い直すのではあるが。)
2011年11月23日水曜日
斧
斧入れて香におどろくや冬こだち 与謝蕪村
(こどものころ、一月十五日のどんど焼きの松牽きは子ども会の仕事だった。小学校の中学年以上の10人ほどで、地区の共有林から松を伐って、牽いてくるのである。松を組むための骨格になる10 mほどの木を2本ばかり倒し、そのほかに威勢よい炎を上げるための枝を落とす。一人で牽けるだけの枝をロープで縛ると、次々に斜面を駆け下りる。勢いよく走り降りて前の子に追いつく。立ち木に引っ掛けたりしてもたもたしていると後から来る子に追いつかれる。競争みたいで面白かった。ろくな防寒具もないし靴は普通の運動靴なので、雪の年は寒くて辛かった。それで、寒いなかで鉈で松の枝を打つと、シュッと生生しい匂いが飛び散るのである。)
いかに木を殺すか冬のこどもらは くろやぎ
いかに木を殺すか冬のこどもらは くろやぎ
2011年11月20日日曜日
2011年11月19日土曜日
2011年11月18日金曜日
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