繰り返し氷の張るはおそろしき 永田耕衣
(僕が子どもの頃は地球はいまより寒くて、冬になると雪が沢山降ったし、道路脇の用水路にも氷ができていた。近所の神社に池があって、春になると蛙がうじゃうじゃ孵るのだが、その池に氷が張って、毎朝学校に行く途中石を投げたり、縁に半身を残して片足のつま先で突っついたりして、割った覚えがある。割れた氷を掬いあげて、氷越しの景色を面白がったりするが、ふざけあったりしているうちに粉々に割ってしまう。学校の帰りに見ると池の氷はたいてい融けてしまっているのだが、格別寒い日は、割れたままの氷が残っていたりする。翌朝にはその割れ残りを含んだままに新しい氷が張っている。氷は来る日も来る日も張っていた。)
薄氷の透けて世界の懐かしき くろやぎ
(氷には何かしら得体のしれないところがあると思う。こういうことを書くと、そのはしからすぐに、いや氷だけではなくて石にも木にも得体のしれないところはある、と思い直すのではあるが。)
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