2011年12月31日土曜日

大晦日

父の写っているビデオを見つけてくれた人がいて、久しぶりに動いている父を見た。不可思議な世の中である。今年は、世界中で1億人くらい、日本で100万人くらいの人が死んだ。動画のなかで動いている人が大勢いるのだろう。


大晦日死者みな生きている動画 くろやぎ


娘二人来て帰りけり大晦日 永井龍男

2011年12月24日土曜日


文明の衰退はとどまるところを知らず聖夜かな


(van der Werff の「キリストの埋葬」。青が印象的である。17世紀までのヨーロッパの絵師たちにとって、青い絵の具といえば高価なウルトラマリンとか緑がかったインディゴとかくらいしか無かったのだが、18世紀はじめにベルリンの絵の具屋が何かの配合の間違いで未知の青い絵の具を作ってしまった。ベルリン青とかプルシアン青とか言われる顔料である。これを契機にして人工絵の具の時代が始まったそうである。絵の具界の文明開化である。「キリストの埋葬」はプルシアン青を使った最初の頃の作品。この新しい絵の具をどう使おうかとわくわくしながら考えたんでせうね。)



暗天に青絵の具塗り込めよ聖夜なれば


2011年12月22日木曜日

(googleで「寒晴」を検索したら2頁目の一番上にこのブログが出てきた。googleの検索結果は、他所からどれくらいリンクされているかとかそういう、いわばネット世間での被引用度みたいなものを基準にして表示順位を決めていると聞いたことがある。そうであれば、いくらなんでも、開設したばかりで本人以外は誰もしらないようなページがそんなに上に来るのはおかしいのではないかと思う。ここで文句を言っても仕方ないのであるが。)

冬の鵙決して大人を信じるな


電飾を巻かれて寒し冬木立


冬の空高圧鉄塔刺さりをり


冬帽子寒き宇宙のどまんなか


冬木に手あてれば冬の木になれる

(1,2年前に俳句のようなものを書き始めた頃、とにかく季語をいれて、とにかく定型に言葉を詰めこんで、それでなにか面白いものができないかと思っていた。しかし定型の使いこなし方を知っているわけではないし、そもそも季語をいろいろ知っているわけでもないので、とりあえず「冬」である。あと「冬なんとか」にすればいいだろうとか。われながら、どうかと思う。)

落ちて直ぐ湿る白布や冬の庭 永田耕衣

歩くのみの冬蠅ナイフあれば甜め 西東三鬼

2011年12月13日火曜日

さきっちょ



先っちょに名前をつけて飼っている

先つちよを通つたみづの薄濁り

錆び釘の先つちよにあるかなしみを



2011年12月7日水曜日

月光の象番にならぬかといふ  飯島晴子

(「げつくわうのざう つがひにならぬかといふ」)




2011年12月3日土曜日

寒晴

寒晴やあはれ舞妓の背の高き  飯島晴子


寒晴や釘は一本づつ孤独  奥坂まや


寒晴の丈夫な家を解くかな  正木ゆう子


(「寒晴」は飯島晴子の造語だそうだ。)


寒晴やヴァージニア・ウルフは立つたまま水死する  くろやぎ