癌病めばもの見ゆる筈夕がすみ 相馬遷子
片蔭の生るゝごとく癌うまる 加藤かけい
癌病めばものみな遠し桐の花 山口草堂
また夜が来て花冷えの癌病棟 竹鼻瑠璃男
みこまれて癌と暮しぬ草萌ゆる 石川桂郎
おい癌め酌みかはさうぜ秋の酒 江國滋
癌癒えてよりの歳月冷奴 添野かよ
癌は英語でcancer、蟹座もCancerである。なんでかな、とずっと思っているのだが、まだ調べてない。
日本では半分以上の人が最後には癌で死ぬことになっているので、癌を患うというのは実はそれほど珍しい体験ではないのだが、体験中は結構どきどきしたりするものである。飛び箱12段に向かって助走している最中くらいのどきどき感がずうっと持続する、みたいな。よって、癌を詠んだ句は結構たくさんある。自分の癌を五七五に詠んで季語を添える、という行為はどんな感覚を伴うものなのかと思う。
上に挙げた何句かのうち最初の相馬遷子の句は、なにか突き放したようなところがある。遷子は医師として多くの癌患者を診たのちに、自身も癌を得て二年の闘病生活の末に亡くなった。上の句は発病以前のようにも見えるが、実際は発病後の句であるらしい。
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