2013年4月2日火曜日

オオイヌノフグリ


今の間のおういぬふぐり聖人去り 攝津幸彦

今の間の王/いぬふぐり/聖人去り、でしょうか。何か、諍いでもあったんでせうね。

レールより雨降りはじむ犬ふぐり 波多野爽波

雨はレールから降る。ふむふむ。

犬ふぐり一ぱい咲いてゐる孤独 加倉井秋を

これは分かる気がする。にんげんだもの。「一ぱい」が曲者で、小学3年生の作文みたいに見せかけておいて、いきなりズドン。

犬ふぐり屯す郵便受の下 高澤良一

この句をぢつと見ていると、犬ふぐりがリアル犬の陰嚢に思えてくるという、、、 異化というやつですな。

跼みたるわが影あふれ犬ふぐり 深見けん二

わかります。カメラで撮ろうとしていますね、これは。

口あけて死者来る朝の犬ふぐり 坪内稔典

稔典先生のこの句はさっぱりわからないです、正直(←賛辞


植物の名前としてはイヌノフグリ(犬の陰嚢)であって、でもそれだと6音で使いにくいので、のを取っぱらって5音にしたという俳句的ご都合主義の季語。まあ、日本語の世界からみると、業界用語、隠語、俗語の一種ですかね。しかも、そのへんに咲いているあの花たちは、ほとんどがオオイヌノフグリであって、イヌノフグリではないというのもなにか気になる。はたまた、オオイヌノフグリという植物学的命名自体も「大/犬の陰嚢」のつもりが「大犬/の/陰嚢」と読めてしまってアレだということもある。

そんなこんなが幾重にも重なって、俳句としては「犬ふぐり」ででよいのだろうが、当のオオイヌノフグリたちにとっては、犬ふぐり、犬ふぐり、と言われて、なんか小馬鹿にされているような気がしているのではないかと、他人事ながら心配になる。


ねころんでみよおおいぬのふぐりなり くろやぎ


6 件のコメント:

  1. 気の毒な名前だと思います。
    確かシクラメンも豚の饅頭だったような気がしますが
    それの上を行く気の毒さかなあ。

    もっとも私は俳句を知ってからふぐりの意味を知ったので
    今でもピンときません。
    例えば外国語で性器を表す言葉を聞くのと変わらないようです。

    死者来る朝の死者は、
    朝から疲れている通勤のサラリーマンの男性のような気がしました。

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  2. 初湯殿卒寿のふぐり伸ばしけり       阿波野青畝

    拝みたき卒寿のふぐり春の風         飯島晴子

    のやり取りを思い出しました(^-^)

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  3. 植物の名前はいろいろありますよね、継子の尻ぬぐいなんてのもあんまりだと思う。マテバシイ(馬刀葉椎)とかマテガイ(馬刀貝)とか。マテガイは植物じゃないけど。

    口開けて来る死者ってのはイメージが曖昧でもやもやしていたんですが、いま突然浮かびました。ムンクのさけびの人、それも一人じゃなくて、何人も何人も集団で口開けたままぞろぞろやってくる、うわっ。

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  4. そういえば、俳句ポスト、ポストしたです。兼題でつくるのってこんなに難しいのね−

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  5. 兼題確かに難しいです。ポストありがとうございます(^u^)(私がありがとうって言うのもおかしいんですけど。)

    口開けて来る死者  の句で最初に思ったのは、田舎の舗装されてない道を行く野辺送りの行列でした。人が亡くなって一日たつと口が開いてくるので。
    でも野辺送りって朝もするのかな?という疑問がちょっとだけあります。

    なぜ朝のなんだろう。不思議な句ですね。本当に。

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  6. 芹も難しいけれど頬白はもっと難しい。自分の語彙ではないみたい、というと変な言い方ですが、、

    口開ける死者は、もはや僕の脳内ではムンクの人のイメージで不動ですねー(笑。消そうとしても消せない

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