2013年12月19日木曜日

キチン質


蟬殻を拾へば枯野あたたかし


なんか季語がたくさんある句である。蟬の殻はああ見えてなかなか丈夫で、条件が良い場所で雨に打たれたり踏みつけにされたりしなければ、冬でも結構残っている。蟬自身は殻を脱いで1週間もするとさっさと死んでしまうが、蟬殻は蟬の生に必要とされなかったガラにすぎないからいつまでも残っているのだ、ともいえる。

それはそうと、奈良公園が好きでよく行く。奈良公園といえば鹿。鹿といえば鹿の糞。奈良公園を歩くということは鹿の糞を踏みながら歩くということになりそうだが、そうでもないのは糞虫が糞を処理しているからだと思う。奈良公園の茂った草の下には鹿の糞を食べる糞虫がたくさん生息しているにちがいない。

あをによし、奈良のみやこ、鹿の糞、糞虫、仏の座

これは、兼題「仏の座」で作りかけてみたものの、まとまりそうにもなかったので捨てた句案のガラ。しかし、タンポポの弟分みたいなタビラコに、仏の座などという有り難い名前を付けたのは、糞虫とか鹿の糞とかいうちひさきものどもへの視線が働いていたからではないかとは思っている。



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