2011年11月29日火曜日



棒杭の頭は平ラ朝曇  三橋敏雄


(時々自虐的な気分になることがあるのである。)


(加虐的な気分になることもある。自分の知っている限りの悪人の顔を思い浮かべてギャクタイしてみたりする。あるいは、抽象的な「少年」、「少女」あたりの語彙はギャクタイの対象になりやすい気がする。)


雲湧くやノックの少年貌いびつ明日天気になればいいのに  くろやぎ

2011年11月28日月曜日


繰り返し氷の張るはおそろしき  永田耕衣

(僕が子どもの頃は地球はいまより寒くて、冬になると雪が沢山降ったし、道路脇の用水路にも氷ができていた。近所の神社に池があって、春になると蛙がうじゃうじゃ孵るのだが、その池に氷が張って、毎朝学校に行く途中石を投げたり、縁に半身を残して片足のつま先で突っついたりして、割った覚えがある。割れた氷を掬いあげて、氷越しの景色を面白がったりするが、ふざけあったりしているうちに粉々に割ってしまう。学校の帰りに見ると池の氷はたいてい融けてしまっているのだが、格別寒い日は、割れたままの氷が残っていたりする。翌朝にはその割れ残りを含んだままに新しい氷が張っている。氷は来る日も来る日も張っていた。)

薄氷の透けて世界の懐かしき  くろやぎ

(氷には何かしら得体のしれないところがあると思う。こういうことを書くと、そのはしからすぐに、いや氷だけではなくて石にも木にも得体のしれないところはある、と思い直すのではあるが。)

2011年11月23日水曜日


斧入れて香におどろくや冬こだち 与謝蕪村

(こどものころ、一月十五日のどんど焼きの松牽きは子ども会の仕事だった。小学校の中学年以上の10人ほどで、地区の共有林から松を伐って、牽いてくるのである。松を組むための骨格になる10 mほどの木を2本ばかり倒し、そのほかに威勢よい炎を上げるための枝を落とす。一人で牽けるだけの枝をロープで縛ると、次々に斜面を駆け下りる。勢いよく走り降りて前の子に追いつく。立ち木に引っ掛けたりしてもたもたしていると後から来る子に追いつかれる。競争みたいで面白かった。ろくな防寒具もないし靴は普通の運動靴なので、雪の年は寒くて辛かった。それで、寒いなかで鉈で松の枝を打つと、シュッと生生しい匂いが飛び散るのである。)

いかに木を殺すか冬のこどもらは くろやぎ

2011年11月20日日曜日


死を以て逃亡と為す葱の国  永田耕衣


あんな奴葱食って死ねばいいのに くろやぎ


(葱といえば関西では青葱、関東は白葱である。この葱はどっちだろうか。)

2011年11月19日土曜日

(葱をキル。ざくんざくんとキル。小口でも乱切りでもよいからキル。中華鍋を熱する。油を大さじ1。葱を炒める。強火。卵1個。がーっと混ぜる。すかさず飯。冷めた玄米飯。強火。混ぜない。木べらで軽く押さえる。下がこんがりしたら返す。混ぜない。軽く押さえる。崩れる。返す。押さえる。崩れる。塩をヒトつまみ。葱チャーハン)

葱食いし人ことごとく死せるかな

2011年11月18日金曜日

(ブランコ)

(ブランコに乗っている人がいて、背中を押して揺らしてやりたいとする。まあ、乗っているのは自分自身かもしれないんだけど。それで、その人をどうやって揺さぶるかってことを、時々ぼんやりと考えている。まあ、それだけです。)

2011年11月17日木曜日

冬の空


白鳥飛んで脚に「あたり」の文字見ゆる


小惑星の一つ二つ浮く冬の空



2011年11月16日水曜日

絶滅


シロサイや絶滅という選択肢


消灯も絶滅もextinctionだぜ冬銀河

2011年11月15日火曜日

先っちょ



さきつちよのない國おおかみをころせ


さきっちょの曖昧なまま血が巡る


抽斗にさきつちよばかり蒐めたり


さきっちょの尖ったままに古びたる


人にみなさきっちょがある世界よし