走ってる ハンカチ落としてからずっと
昔からよく知られている「間際効果」というのがあって、それは何かというと、なかなか進まないしごと(対価を得る「仕事」に限らず、広い意味での単なる「しごと」)も、どこかの誰かによって締め切りが設定されると、実はそれでもすぐにはなかなか進まないのだが、締め切りの間際になっていやいやでも手を動かし出すと、いつしか勝手に手が動いたかと思うと、みるみるうちにはかどって、あっという間に終わってしまうという、アレのことである。
この間際効果というのは本当にあって、それは僕自身身をもって知っているのだが、実は最近新しい発見をした。何かというと、締め切りが定期的に繰り返し繰り返しやってくるような状況では、最初のうちは間際効果で確かにサクサクとしごとをこなせるのだが(この「こなせる」、状況をどことなく他律的に眺めているような意識が既に入り込んでいる)、そのうちに体のどこかでキョゼツハンノウとかいう虫が蠢きだして、最初は小さい小さい虫が1匹いるだけなのだが、日を追うごとに2匹が4匹、4匹が8匹、8匹が16匹、、、、と増えてくる、そしてついには掟破り、ではなく締め切りを破ってなにもかも放り出す、ということになるのである。締め切りを放り出すまでの期間というのは、おそらく人によってだいたい決まっているのではないかと思うが、僕の場合はざっと20回か30回の締め切りが続くともう駄目らしい。
到底、いしいひさいちにはなれそうにない。