2013年6月18日火曜日


強情な我ゐる鰺にぜいごある くろやぎ


というわけで「我」の句特集でも。と思ったのだが多すぎてとても選びきれない。
まずは先達から。

人に家を買はせて我は年忘れ 芭蕉

我と来てあそべや親のない雀 一茶

蠣むきや我には見えぬ水かがみ 其角


おつぎ。我といえばこの三俳人(世間でそう思われているかは知らないが)。


我思ふまゝに孑孑うき沈み 高浜虚子

来る人に我は行く人慈善鍋

錦木に寄りそひ立てば我ゆかし

枯荻に添ひ立てば我幽なり

見下ろせば秋の山々我をめぐる

我を指す人の扇をにくみけり

蛇逃げて我を見し眼の草に残る

浮み出て我を見てゐるゐもりかな


子に来るもの我にもう来ず初暦 加藤楸邨

銀河天に茄子むらさきに我は我に

わが影の我に収まるきりぎりす

冬蜂と我とエスカレーター天にゆく

妻は我を我は枯木を見つつ暮れぬ



皆行方不明の春に我は在り 永田耕衣

陽炎や我に無き人我を出る

鰊そばうまい分だけ我は死す

物として我を夕焼染めにけり

野菊道数個の我の別れ行く

薄氷や我を出で入る美少年


同じ「我」というのに、違う意味で使ってるんじゃないかというくらい三者三様です。面白い。

以下、あの人この人。

サングラスして我といふ闇にゐる 満田春日

滴りは石筍を打ち我を打ち 阿波野青畝

跪く我は異教徒青畝の忌  平田冬か

物買へる我の後に寒念仏 星野立子

咳き込めば我火の玉のごとくなり 川端茅舎

目覚めがちなる墓碑あり我れに眠れという 折笠美秋

君琴弾け我は落花に肘枕 芥川龍之介

黄落の我に減塩醤油かな 波多野爽波

栄螺の棘どれかひとつは我を指す 田川飛旅子

我狂気つくつく法師責めに来る 角川源義

我こそは浮島守よからすうり 夏石番矢

万両の日にぬくみゐる我もまた 森澄雄

シベリヤ見き眼にて白鳥我をみる 高野ムツオ

我を見ぬふりをしばらく寒鴉 行方克己

我を遂に癩の踊の輪に投ず 平畑静塔

怖るるに足らざる我を蟹怖る 相生垣瓜人

我病みて冬の蝿にも劣りけり 正岡子規

行く我にとゞまる汝に秋二つ

待遠し俳句は我や四季の国 三橋敏雄


俳人はとにかく「我」が好きなのであるらしい。

0 件のコメント:

コメントを投稿